理論編

1節わたしたちを取り巻く情報

1情報とメディア

あなたにとってメディアとは何だろう。

情報とは何か

情報とは,物事に関する知らせであり,それを受け取る主体に判断や振る舞いの基準を与えるものである。この主体となるものはさまざまである。もちろん,人間は,他者やマスメディア(テレビ,新聞,雑誌などのように少数の発信者が多数の受信者に情報を発信し,発信者と受信者の関係が固定されているメディアのこと。)などから情報を受け取る。また,人間以外の生物,コンピュータなどの非生物,さらに生物を構成する個々の細胞なども情報を受け取り,それに基づく判断や振る舞いを示す。

もし,物事に関する知らせが,判断や振る舞いの基準を与えないものであったとすれば,情報とはいえない。

情報は,「もの」とは異なっている。ものを伝えるときは,新しい所有者の手に渡り,元の所有者の手元には残らないが,情報の場合は複製されて伝わるので,新しい所有者も元の所有者も情報を持つことになる。情報技術の発達によって,情報の複製が容易になっていることから,情報は次々に複製され,簡単に広い範囲に伝わってしまう。このため,個人情報の流出や著作権侵害などの問題に特に注意する必要がある。 クロード・エルウッド・シャノン(Claude Elwood Shannon) 1916-2001年 アメリ力の数学者。 情報の量の定義をはじめ,データ圧縮暗号化など,情報技術の基礎を作り上げた。 図1 情報が与える影響 主体にとって何らかの意味や価値を持つものが情報であり,当然のことを伝えても情報にはならない。

メディアとは何か

情報はメディア(情報を伝達する仲介役となるもの。電話やコンビュータネットワークのような情報機器を用いたものばかりでなく,さまざまなものをメディアと考えることができる。)によって伝えられる。ただし,メディアという言葉は,いくつかの意昧で、使われる。例えば,以下の3つがある。

表現のためのメディア:文字,音声,動画など,表現手段としてのメディアである。音声から文字など,メディアの表現形式を変えることをメディア変換(それとは別に,ハードディスクからCD-Rにデータを移すような場合をメディア変換ということもある)という。

伝達のためのメディア:情報の伝達や通信の媒体として使われるメディアである。手紙,電話,新聞,テレビ,インターネットなどがある。

記録のためのメディア:情報の記録や蓄積のために使われるメディアである。手帳,ノート,CD-ROM,ハードディスク,フラッシュメモリなどを示している。

表1 伝達のためのメディアの特徴
同期性(発信者が情報を発信するのと,受信者がそれを受信するのが同時であること。)

技術の進歩と情報活用

現在は,情報が重要な役割を果たす高度情報社会となっている。高度情報社会を生き抜くためには,多くの情報を活用できることが必要とされるが,個人が蓄えられる情報には限界がある。そのため,情報をあらかじめ蓄えておくのではなく,その都度,情報技術を駆使して情報を活用することが現実的であり,また,それが可能になっている。今日では,そうした活用の技能を身に付けることが大切である。
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