理論編

2節アナログからディジタルへ

2ディジタルだからできること

ディジタルデータの利点

コンピュータは,ディジタル化されて0か1で表現された情報を扱うが,このことには,いくつかの利点がある。

複写や再利用をしたり,伝達をしたりしても情報が劣化しない
ディジタル機器は,対応する電圧によって0か1かを示す。情報を複写したり伝達したりするときにはノイズが混入するが,それぞれの電圧には十分な違いがあるため,もともとOであったか1であったかを判別することができる。これによって,元どおりの0か1にすることができる。(ノイズが大き過ぎる場合には,元どおりに戻らないこともある。)
図1 ディジタルデータの復元
しきい値(ディジタル機器は,ある値より大きな電圧力が加われば1,小さければOと判別する。この値のこと。 )

情報の加工が容易である
ディジタルデータに対して,コンピュータは,置き換えや計算などの処理を行うことができる。この処理を通して,文字,音,画像,動画像などの情報の加工が可能である。例えば,イラストにおける特定の色を別の色に変えたいとき,その特定の色のコードを別の色のものと入れ替えればよい。コンピュータは,このような処理を高速に誤りなく行うことができる。
図2 ディジタルデータの加工性

多犠な形態の情報を統合できる
アナログデータは,文字,画像,音などの表現形式が違えば,それぞれ別の装置で処理し,別のメディアで記録してきた。これに対して,ディジタルデータは表現形式によらず,一括して処理したり保存したりできる。コンピュータは従来,計算機としてのイメージが強かったが,現在では,あらゆる情報を統合処理する機器としての面が強調される。異なる表現形式の情報を統合して扱う技術や機器をマルチメディアという 。
図3 多様な形態の情報の統合
OCR(光学的文字認識。印制された文字を読み取るためのソフトウェアをOCRソフトウェアという。)

memo

マルチメディアという言葉は,統合処理の機器や媒体を意味するほかに,文字,音声,画像など,表現形式としてのメディアの統合や,コンピュータが持つインタラクティブ(互いに働きかけることが可能であること。双方向性。)という意昧合いが含まれる場合もある。

情報の圧縮が可能である
2進数の数列が規則的なパターンを取っている場合に,それを簡略に表現するなどの方法によって,全体の情報量を小さくすることができる。(情報の圧縮には,可逆圧縮と非可逆圧縮がある。可逆圧縮とは,データを復元したときに,完全な復元ができる圧縮である。一方,大きな圧縮を行うために知覚しにくい部分を削除するなど,完全な復元を犠牲にする場合がある。こうした圧縮を非可逆圧縮という。)

ディジタルデータの問題点

一方,データがディジタル化されることによる問題点もある。

微妙な情報が失われる
AD変換の標本化,量子化の過程で,微妙な情報が失われる。例えば,音データがディジタル化される場合,非可聴域にある周波数の音は除外される場合もあるが,人間はこのような音からも影響を受けることが知られている。

著作者の権利が侵害される
複写や伝達をしても情報が劣化しないことから,音楽や映像作品などの著作物の複写や伝達が繰り返され,多くの人に行き渡ってしまう。その結果,著作者の権利が侵害されることが起こりやすい。

情報が流出する
大きなデータを小さな記録メディアに保存したり,通信回線を共有したりすることができるため,情報が流出しやすい。更に,流出した情報を回収することは難しい。

データ量が膨大になる
コンピュータの性能や記録メディアの容量の増加,通信の高速化などにより大きなデータが簡単に扱えるようになり,それに伴ってデータ量も膨大になっている。
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